慢性炎症と健康

今回は慢性炎症と健康に関する記事です。

慢性炎症と病気

私たちの体には、細菌やウイルスに対する免疫機能や、体内に入った有毒物質を分解したり排出する機能があります。

また、病気や怪我をすると、身体の組織が一部壊れることがありますが、その壊れた部分を修復する機能があります。

こうした免疫、解毒、修復の機能に炎症が関わります。

炎症が起こると生体の防御・修復反応によって、発熱や痛みなどが発生します。

炎症反応は、感染症や怪我、アレルギー反応などで急激に高まりますが、急激な炎症は体を守るための人体の自然な反応です。

ですが、この炎症が一時的ではなく、長く続いて慢性化すると、様々な病気や不調の原因になることが分かっています。

体内で炎症が慢性化すると、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、がん、うつ病、自己免疫疾患、神経変性疾患、サルコペニア、骨粗鬆症、免疫力の低下など、多くの病気につながることが近年の研究で報告されています。

また、体の痛みや疲労などの不調にも慢性炎症が関わっていることが分かっています。

慢性炎症が起こる仕組みは複雑ですが、その原因には生活に関わることが多く含まれています。

慢性炎症の原因として知られるものには、感染症、運動不足、内臓脂肪、腸内細菌の乱れ、不健康な食事、孤独、ストレス、睡眠不足・障害、体内時計の乱れ、大気汚染、有毒物質、タバコなどがあります。

糖尿病の重症度を測るために血糖値を測定するように、慢性炎症の強さを測るために何らかのマーカーがあると良いのですが、その仕組みの複雑さから慢性炎症のマーカーというのはまだ特定されていません。

慢性炎症とライフスタイルの関係

現代になって昔と比べて生活スタイルや環境が変わったことで、先進国では慢性炎症に関連する病気にかかる人が非常に増えています。

これは、現代でも伝統的なライフスタイルで暮らしている人々と、先進国の人々を比較した研究でも明らかになっており、たとえば狩猟を生業にしている人々の間では、動脈硬化に関連する脳卒中や心筋梗塞といった病気にかかる人の割合が非常に少ないことが知られています。

遺伝と、遺伝以外の生活習慣・環境の影響をそれぞれ調べるために、一卵性双生児を対象にした研究というものがよく行われていますが、免疫に関する遺伝と、遺伝以外のそれぞれの影響を調べた研究では、免疫は半分以上が遺伝以外の生まれてからの生活習慣や環境の影響を受けることが分かっています。

免疫は慢性炎症にも関わっていることから、慢性炎症も遺伝以外の生活習慣や環境の影響が大きいことが推測されます。

慢性炎症を抑えるために役立つこと

現代文明社会で暮らす私たちが、体内の慢性炎症をなるべく抑えて、病気や不調になりにくい体を作るために役立つことを以下に紹介します。

運動をする

運動で筋肉を動かすことで、サイトカインやマイオカインといった全身の炎症を軽減する物質が血液に放出されます。

運動不足は慢性炎症をもたらし、脳卒中、心筋梗塞、2 型糖尿病、骨粗鬆症、がん、うつ病、認知症などの病気のリスクを上げます。

普段から運動不足と感じている人は、ぜひとも日常の運動を心がけるようにしてみてください。

運動の目安として、週に合計で150分以上の、息が上がって会話ができる程度の中強度の運動を行うと良いとされています。(会話ができないくらいの高強度の運動であれば週に75分以上)

参照:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33239350/

普段運動をしていない人は、いきなりハードなスポーツや運動を行う必要はなく、少し歩くペースの早いウォーキングやスロージョギングであれば、無理なく長く続けられると思うのでお勧めです。

なお、ひどく疲れていたり、病気で体が弱っている場合は、無理をする必要はないので、体調がある程度整っている時に運動を行ってください。

食事に気をつける

小麦粉や砂糖などの精製された食品、アルコール、乳化剤(ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロース)を含んだ加工食品、トランス脂肪酸、塩分を大量に取ることで、腸内環境が乱れ、慢性炎症が強まることが、さまざまな研究で報告されています。

腸内環境が悪くなるとゾヌリンという物質が増えて、腸のバリア機能が落ちてしまい、腸内細菌が作る毒素が血液の中に流れ込んで、慢性炎症に関わってくることが指摘されています。

オメガ3脂肪酸という物質は炎症を抑える働きがあり、魚や亜麻仁油などで摂取できる必須脂肪酸ですが、同じ必須脂肪酸であるオメガ6脂肪酸を含むリノール酸という油を取り過ぎるとオメガ3脂肪酸の効果が低下してしまうことが分かっています。

リノール酸は、ひまわり油、綿実油、とうもろこし油、大豆油、ラー油、ごま油、サラダ油といった普段よく使う油に含まれており、脂っこい食事をたくさんとるとリノール酸過剰摂取となって、体内の炎症が進みやすくなります。

そのため、欧米式の肉・油・塩分が多い食事を普段から取り過ぎないように注意する必要があります。

食事で心がけるべき具体的内容は以下の通りです。

・野菜、果物、玄米、全粒粉、魚、大豆類を多めに取る。

・揚げもの、カップ麺、菓子パン、砂糖の入ったおやつ・飲み物を避けるか、量を減らす。

ストレス・環境に気をつける

現代社会特有の長時間労働を伴うような非常にストレスの高い仕事を長年行うことは、慢性炎症を強める原因になります。

また、夜間に強い光を浴びて、体内時計を乱すことも慢性炎症につながることが指摘されています。

できるだけ、強いストレスがかかるような仕事を長期間行うことは避け、夜間にスマホやTVを見過ぎないよう心がける必要があります。

タバコ・有毒物質を避ける

タバコは多くの有毒物質を含んでおり、体内の炎症を強めます。

また、現代に存在する様々な有毒化学物質も炎症に関わることが分かっています。

プラスチックに含まれるフタル酸エステル酸、ビスフェノールAは内分泌かく乱物質として有名ですが、これらも炎症に関連していることが報告されています。

日用のプラスチック製品を使用してフタル酸エステル酸やビスフェノールAが人体に入っても、現在の基準では、吸収されずに排出されることから大人の場合は問題ないとされています。

ですが、子どもや幼児への懸念が完全に払しょくされないことから、アメリカのFDAは2012年に哺乳瓶、2013年に粉ミルクの包装にビスフェノールAを使用することを禁止しています。

現在、環境に無数に存在するマイクロプラスチックが話題になっていますが、マイクロプラスチックの人体への長期的な影響はまだ分かっておらず、将来の研究報告次第ではプラスチックの使用についても注意が必要となる可能性もあります。

まとめ

以上、慢性炎症と健康に関して簡単にまとめてみました。

慢性炎症は様々な病気や不調に関わっており、現代社会に生きる私たちにとって健康を維持する上では避けては通れないトピックです。

慢性炎症を進行させないためには、ふだんから運動を行う、健康的な食事をとる、過度のストレスを避ける、有毒物質を避ける、といったことが有効です。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

参考文献

Chronic inflammation in the etiology of disease across the life span - PMC (nih.gov)

Chronic Inflammation - StatPearls - NCBI Bookshelf (nih.gov)

Is it safe to microwave plastic containers? - Scienceline

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