今回はコーヒーやお茶に含まれているカフェインの健康への影響についての記事です。
目次
カフェインの効果
覚醒効果
人の脳の中にはアデノシンという物質があり、これはリラックスや眠気を誘う作用があります。
カフェインはこのアデノシンの作用をブロックすることで、アデノシンのリラックス効果を減らして、興奮や覚醒をもたらします。
眠気覚ましにカフェインを取るという人も多いのではないでしょうか。
また、カフェインによって一時的に記憶力や認知・運動機能のパフォーマンスが上がることが報告されています。
鎮痛効果
カフェインは血管を収縮させる作用があります。
頭痛の中には頭の血管が拡張して周りの神経を刺激することで起こっているものがありますが、カフェインによって痛みを和らげる効果が期待できます。
利尿作用
カフェインが血管を収縮させると血圧が上昇して、一時的に腎臓への血流が増加します。
腎臓への血流が増加すると尿が多く作られるようになって尿量が増加します。
病気の予防
カフェインを取ることで、いくつかの病気の予防に効果がある可能性があります。
アルツハイマー型認知症やパーキンソン病といった脳の病気の予防効果がある可能性があり、まだ確実なことは分かっていませんが、現在研究が進んでいます。
カフェインと睡眠
カフェインは覚醒作用がありますが、カフェインの取り方によっては夜の睡眠に影響を与えることもあります。
カフェインは摂取してすぐに吸収されますが、体内で分解されるのに時間がかかります。
カフェインが分解されて血中のカフェインの濃度が半分になる時間は人によって異なり、1.5時間~9.5時間と報告されています。
カフェインを摂取して8~9時間たっても、人によってはまだカフェインが体内にかなり残っている場合があるということです。
体にカフェインが残っていれば寝つきが悪くなったり、睡眠の質が落ちることがあるため、睡眠に悪影響を及ぼしたくない人はカフェインの取り方には気をつけた方が良いでしょう。
一般的には、睡眠に影響を与えないよう夕方以降はカフェインを取らないことが推奨されています。
ただ、人によってカフェインの効果はばらつきがあり、夜にカフェインを取っても睡眠に影響が出ない人もいれば、カフェインに敏感で昼間にカフェインを取っても睡眠に影響が出てしまう人もいます。
自分でカフェインに対する感受性がどれくらいかというのを自覚して、普段のカフェインの取り方を決めると良いと思います。
カフェインの悪影響
カフェインの副作用
カフェインは覚醒効果がありますが、取り過ぎると不安が高まることがあります。
また、胃酸の分泌が促進されるので、空腹時にカフェインをたくさん取ると胃が荒れてしまい、胃もたれや胃痛を引き起こすことがあります。
カフェインは血圧や心拍数を上昇させる効果があり、これは正常な人が適切な量のカフェインを取っていれば問題ありませんが、心臓に病気がある人がカフェインを取ると心臓に負担をかけて悪影響を及ぼす可能性があります。
最近の研究では、カフェインが不整脈の1つである心房性期外収縮を増やすことはないと報告されていますが、元々不整脈のある人がカフェインを多く取ることは控えた方が良いでしょう。
また、運動直前にカフェインを取ることで、運動後に心臓の血流が減ることが報告されています。
これも健康な人が適切な量のカフェインを取っているのであれば大きな問題はないと思われますが、心臓の持病がある人には良くない可能性があるため注意が必要です。
カフェインへの依存・カフェイン離脱症状
カフェインを普段からたくさん摂取していると、カフェインに対する身体的・心理的な依存が発生することが知られています。
カフェインはアデノシンの作用をブロックしますが、カフェインを日頃から摂取しているとアデノシンの受容体が増えて通常時のアデノシンによる作用(リラックスや眠気を誘う作用)に敏感になる傾向があります。
また、カフェインを多く取ることで、カフェインに対する耐性が出てきて、カフェインの効果が現れにくくなってきます。
そのため日常的にカフェインを取っている人の中には、よりカフェインを欲してカフェインの摂取量が増えていく人もいます。
カフェインを普段から取っている人が急にカフェインをやめると、さまざまな離脱症状が出ることがあります。
離脱症状として知られているのは、頭痛、疲労、注意力の低下、眠気、満足感の低下、抑うつ気分、集中力の低下、イライラ感、頭がすっきりしない感じなどがあります。
人によって離脱症状の出方は異なりますが、普段からたくさんカフェインを取っている人の方が、カフェインを止めた時の離脱症状が強く出る傾向にあるようです。
人によってはカフェインをやめて1週間経ってもまだ離脱症状が続く人もいるようです。
離脱症状を防ぐには、急にカフェインをゼロにするのではなく、徐々に減らしていくのが良いです。
カフェイン中毒
大量のカフェインを一気に取ってしまうと、時に命にも関わることがあります。
カフェインの致死量は10gとされています。
ただ、普通に生活してればカフェインをそれだけ取ることはまずないので、これについては過度に心配しなくても良いでしょう。
カフェインの分解
カフェインが分解されて血中のカフェインの濃度が半分になる時間は1.5時間~9.5時間(平均で約5時間)とされていますが、いくつかの要因でこの時間が変わってくることが知られています。
たとえば喫煙者はこの時間が最大で50%短くなることが報告されています。
逆に妊娠している女性の場合、カフェインの分解時間が長くなり、妊娠後期では15時間以上長くなることが知られています。
胎児や新生児はカフェインの分解能力が低く、生まれたばかりの子供はカフェインの血中濃度が半分になるのに約80時間(長いと100時間以上)もかかると報告されています。
妊娠中や授乳中に大量にカフェインを取ると胎盤や母乳を通して子どもにカフェインが移行するので、これらの時期はカフェインを少なめにすることが推奨されています。(授乳中に1日10杯以上コーヒーを飲むと、子どもの寝つきが悪くなったり、落ち着かなくなると言ったことが報告されています)
経口避妊薬(ピル)を飲んでいても、カフェインの分解時間が長くなることが知られています。
カフェインの分解には肝臓が関わっているので、肝臓の病気によってはカフェインの分解時間が長くなることがあります。
カフェイン摂取量の目安
健康な成人では、1日のカフェイン摂取量の目安は400mgまでとされており、この範囲内であればカフェインの副作用が大きく出ることはないとされています。
ただし、人によってカフェインの感受性が異なることも知られており、カフェインに過敏な人は400mg以内でもカフェインの副作用が強く出る可能性があります。
妊婦は300mg、子どもは体重1㎏あたり2.5mgまでの摂取であれば良いとされています。(アメリカやイギリスでは妊婦は200㎎までと推奨されています)
カフェインに過敏であると感じている人は、これらの推奨量によらずなるべくカフェインの摂取量を少なくした方が良いでしょう。
カフェイン摂取量の目安400㎎とは、各種飲料で見ると以下の通りです。
(参考:factsheets_caffeine.pdf (fsc.go.jp))
・コーヒー:3.4杯(1杯200ml)
・紅茶:6.6杯(1杯200ml)
・緑茶・ウーロン茶:500mlのペットボトルで4本
・エナジードリンク:製品によって異なるが、最もカフェインが入っている飲料(1本300㎎)では1.3本
飲み物以外にもチョコレートにはカフェインが含まれており、ガムの中にもカフェインが含まれているものがあります。
まとめ
カフェインには覚醒効果があり、一時的な眠気覚ましやパフォーマンス向上に役立ちます。
カフェインが血中で半分になるまでの時間は1.5~9.5時間とばらつきがあり、取り方に気をつけないと睡眠に悪影響を及ぼすことがあります。
カフェインを取り過ぎると、不安が高まったり、胃や心臓に負担をかけることがあります。
カフェインを習慣的に取ると依存性や耐性が発生し、急にカフェインをやめることで離脱症状が出ることがあります。
妊娠中や授乳中の女性、子ども、カフェインに過敏な人はカフェインを取り過ぎないよう注意する必要があります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
参考文献:
The Safety of Ingested Caffeine: A Comprehensive Review - PMC (nih.gov)