今回はニュース記事に対する感想記事で、こちらのニュースを取り上げます。
山上容疑者に現金100万円超 拘置所に差し入れ続々(産経新聞) - Yahoo!ニュース
山上容疑者に現金100万円の差し入れが届いているということがニュースになっています。
安倍元総理を殺害した山上容疑者には、事件当初から一部の人々がその境遇に同情を寄せたり、山上容疑者への減刑を求めるといったことが報道されています。
山上容疑者の境遇は確かに同情に値すべきものです。
幼いころに父親が自殺して、母親が旧統一教会にのめり込み累計で1億円以上を教団に献金して、のちに自己破産したと伝えられています。
山上容疑者が20代の時には兄と妹が経済的に困窮していたので、兄妹に死亡保険金を渡すために自殺を図ったこともあるとのことです。
いわゆる普通の家庭で育った人々からすると、山上容疑者は想像を絶する苦難を経験していると言えます。
しかし、たとえ山上容疑者の生い立ちが悲惨なものであっても、法に則った裁きは受けなければなりません。
かつて、戦前の日本で五・一五事件が起こった際に、首謀者らに対してメディアや民衆が同情を寄せ、全国で首謀者らへの減刑嘆願運動が盛り上がり、結果的に量刑が軽くなりました。
その後、二・二六事件が起こりますが、この時、二・二六事件の首謀者らは五・一五事件で世間が理解を示してくれたことから今回の事件でも世論は自分たちに味方するだろうと考えていたようです。
二・二六事件が起こったことで、結果的に当時の政党政治が弱体化し、軍部の台頭につながり、太平洋戦争にいたる一連の動きを加速させることになりました。
戦前の歴史から学ぶのであれば、政治家らを暗殺した人物らに対して減刑を行ってしまうと暗殺へのハードルが下がり、次なる政治家への暗殺事件を起こしかねません。
山上容疑者に対して同情を寄せたり、支援を行う大きな理由の1つに、暗殺されたのが安倍元総理であるというのもありそうです。
たとえばこちらのニュース記事では、山上容疑者に同情を超えて礼賛する人々もいると書かれています。
山上容疑者に「誕生日おめでとう」「愛してる」同情を超えて礼賛へ…国葬前に “人気” 上昇中(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース
暗殺されたのが、他のあまり有名でない国会議員や地方議員であったら、おそらくここまで礼賛をする人々も多くなかったのではと思います。
安倍元総理の功績については国民の中では賛否が分かれています。
首相在任中にアベノミクスの実行に加えて、平和安保法制の制定を行い、憲法改正にも意欲を見せていたことは多くの人が知るところです。
自衛隊の活動内容が拡大したり、憲法を改正することに反対の人々の中には、安倍元総理のことをよく思わなかった人が多かったでしょう。
アベノミクスの実績についてはここではあまり触れませんが、アベノミクス発動後は雇用や株価の回復など一定の効果が見られたことは事実です。
また、安倍元総理は諸外国との連携において強いリーダーシップを発揮したことが知られています。
CNNのこちらの記事の始めの方の文を引用します。
アジア太平洋地域の多くの人々にとって、安倍晋三は、台頭する中国が米国主導の政治・軍事同盟体制に突きつける課題を先見的に認識した人物であった。
そして、7月8日に暗殺された元日本の首相は、この課題に対応するために、間違いなく欧米の同時代の誰よりも多くのことを行った。
安倍首相は、第二次世界大戦の影からついに日本を脱出させた指導者として、多くの人々の記憶に残るだろう。
安倍首相は、世界有数の経済成長を背景にした中国の人民解放軍の急成長が地域のパワーバランスを崩すことを予見し、その結果、日本は戦後、米国に押し付けられた平和主義憲法を見直す必要があると主張した。
2014年、安倍政権は憲法を再解釈し、日本軍が理論上、海外で戦えるようにした。そして、ステルス戦闘機を購入し、それを搭載するために第二次世界大戦後初の空母を建造するなど、そのための手段を与えた。
しかし、自国の防衛、そして多くの人々にとってより広いアジア地域の安全保障に対する彼の最大の貢献は、軍備ではなく、言葉であろう。
"自由で開かれたインド太平洋 "というシンプルな言葉を生み出したことだ。
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このように海外では(引用記事はアメリカの報道機関のものですが)安倍元総理は近年のアジア地域の安全保障について大きな役割を果たしたと認識されているようです。
ですが、周知のように「森友・加計学園」や「桜を見る会」の一連の問題で安倍元総理が権力を私物化していたのではないかという疑惑が持たれ、少なくない数の国民が安倍元総理に対して怒りを覚えていたことも事実です。
山上容疑者の行為を称賛する人々は、安倍元総理に対して反感を抱いていた(あるいは旧統一教会に怨恨があった人もいるかも知れませんが)ことは間違いないでしょう。
特にこうした人々の中には、権力の中枢を破壊できた(ように見える)ことに対するカタルシスを感じる人も多いのではないかと思います。
いわゆる左寄りの人たちの中には反権力志向が強い人もいて、ほとんどの人々が権力に反感を持っても政治家の暗殺にまでは至らないことから、それを(非道な形で)やってのけた山上容疑者を礼賛したくなるのでしょう。
ですが、法治国家である以上、また今後の日本の民主主義を維持するためにも、山上容疑者の行為を正当化することは許されません。
どんな事情があっても山上容疑者は法に則った裁きを受けなければならないのです。
山上容疑者を支援するのは自由ですが、人々が歴史の過ちを繰り返したり、民主主義をないがしろにするようなことがないよう願っています。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。