今回は、こちらの本を読んで私なりの所感を述べる記事になります。
健康情報の記事については、エビデンスの引用をしながらだと、まとめるのに時間がかかるのと、自身に馴染みのある領域が必ずしも大量かつ豊富にあるわけではないので、出し尽くし感もあり、今後は少しずつの更新になると思います。
私は大企業に所属して数年になりますが、組織というのは大きな仕事や成果を残せる反面、間違った方向へ行ってしまうと多くの人々に相当な損失を与えてしまうことを最近肌身で感じるようになりました。
組織の意思決定を担うのは、組織のリーダーであり、リーダーの方針次第で組織の行く先は大きく変わってきます。
リーダーは優れた意思決定をする必要があり、その判断を誤ると組織に多大な損失をもたらすことから、当たり前ですが組織が大きければ大きいほどリーダーの責務は強くなってきます。
社会や時代というのは日々変化しており、何が本当に正しい決断かというのは、時に判断が難しいこともありますが、少なくてもその時々で最良の判断をリーダーは行っていかなければなりません。
組織に属するメンバー1人1人も環境や社会の変化に応じて、過去の習慣やルールを時に改変していかなければなりません。
ですが、日本ではおそらく多くの組織において、リーダーに先んじてメンバーがこれまでと違った取り組みや方針を打ち出すと、出る杭として叩かれることが多いのではないかと思います。
仮にメンバーから何か新しいことを始めるとしても、リーダーをはじめとした関係者に事前に相談したり周知して根回しが必要になってきます。
こういった根回しは日本社会では大事なこととして認識されていると思いますが、実際、どの人に何を言えばよいかといったことを色々考えて慎重にやる必要があり、時間と労力をそれなりに費やさなければいけないので効率が良くありません。
そもそもが、現状維持が楽だからといって、環境や状況の変化に対応せずにいつまでも同じやり方を続けるのは色々と不都合が出てきそうなものですが、組織で権限を持っている人々が考えを改めないと改善はされないという現実があります。
この著作では、旧日本軍は日清・日露戦争で成功を収めた軍のやり方を太平洋戦争にいたるまで大きく変えようとせず、新たに学習して組織の方針や活動方法を改善していく力に乏しかったとあります。
日本の場合、上昇していく過程にあっては目的に向かって組織が大きな力を発揮しますが、いったん成功を収めてしまうと、その体験に安住して、以降の時代の変化に迅速に対応できない歴史を繰り返しているように見受けられます。
旧日本軍と同様に、今の日本も戦後、高度経済成長を経て、ほとんどの国民が豊かな中流の暮らしを享受できるようになるまでは問題はありませんでした。
しかし、バブル崩壊以降、経済の低迷から脱することができず、現状を維持することに手をこまねいている間に、他のアジア諸国が伸びてきて、産業の相対的な地位が下がり、少子高齢化を前になす術もない状況に陥っています。
日本人は安定的な組織を構築していくのは得意でも、周囲の環境や情勢に合わせて抜本的に組織を改革していく点に関しては非常に不得意な傾向にあるのではないかと思っています。
それは著作でも指摘されている、日本の組織がシステムよりも人間関係重視のきらいがあり、組織統合も人間関係に重きを置いていることも無関係ではありません。
人間関係を崩してまで苛烈な改革を行おうとする人は日本人にはあまり多くないというのもあり、そういうやり方が日本社会では好まれないということもあります。
よく織田信長型のリーダーは日本人には合わないという話がされることがありますが、強烈な個性と態度で既存のシステムや文化を破壊するのは、日本人には好まれず、調和型のリーダーの方が皆の支持を集めやすい傾向にあります。
以前、小泉さんが郵政民営化をスローガンに国民の強烈な支持を集めて、民営化を進めましたが、次の安倍政権以降、抵抗勢力と呼ばれた議員たちは復帰して、郵政民営化も骨抜きにされてきました。
よほどの危機にさらされない限り、今の日本では強力な改革というのはなかなか完遂されないのではと思います。
平和で安定した時代が将来も約束されているのであれば、調和重視の組織というのは大変良いものではあるのですが、残念ながら日本の将来は少子高齢化によって国民の負担がどんどん増えていくことが予想され、大きな改革がなければ生活は今よりも苦しいものになることが予想されます。
今の政府のように微修正型で制度を変えていってもジリ貧になることが目に見えているので、産業や社会保障に関わる大きな改革が必要と考えられるのですが、やはり国民の多くは調和を重んじて大きな変革を望まないので、厳しい現実がこれからやってくるのではないかと考えています。
少子高齢化を迎えるに当たって、日本型の組織というのは大きなハンディキャップを背負っている、ということをここでは述べて締めにしたいと思います。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。