雑記:「高齢者は集団自決すれば良い」発言などについて

先日、成田悠輔氏の「高齢者は集団自決すれば良い」といった主旨の発言が、ニューヨークタイムズ紙にも掲載され、一種の騒動に発展しました。

私は成田氏がこの発言をした動画をいくつか視聴したことがありますが、対談の中での文脈を無視して意図的に切り出された発言であることは否めません。

ただ、高齢者にとっては到底受け入れられるような発言ではなく、世間の反響の大きさを踏まえて成田氏にはよく反省していただく必要があると思います。

(↑こちらの動画に該当する発言がありますが、発言自体はこの動画が初出ではありません。)

近年、社会保障費の増加が著しく、現役世代が収める保険料、年金の負担率は着実に上がってきており、それでも賄いきれない分を毎年膨大な赤字国債で埋め合わせています。

このままでは将来の世代の負担が大きくなる一方であり、少子化対策や現役世代への支援は急務のはずですが、政治家は票数の多い高齢の有権者の方を向いており、政治家自身も高齢者が多いことから、若い世代は自分たちがないがしろにされていると感じています。

こうした議論の中で出てきたのが「高齢者は集団自決すれば良い」発言です。

成田氏としては、若い世代にポジションを譲らない高齢の政治家らが潔く引退してくれないかという考えもあったのだと思いますが、この発言を聞けば高齢者や高齢者を家族に持つ人々はみな不快に思うことは想像に難くありません。

私自身は、高齢者を支えるために若者が犠牲になる社会が望ましいとはとても思えませんが、今後、社会が高齢者を切り捨てるような方向に行ってしまうことも避けなければならないと思います。

社会を維持していく上で一部の人々の命を犠牲にするというのは、困難な状況にあってもギリギリまで選択しないよう努力する必要があります。

歴史を振り返れば、資源の乏しい時代、集団の生活を維持するために高齢者や病気・障害ある人などを不本意ながら犠牲にしなければならなかったケースというのは数多くあったと思われます。

災害や戦争などで食糧が十分得られず、集団の全員が生き残れないとなった時、人々は誰を生き残らせて誰を犠牲にするかという決断をしなければならなかったはずです。

それは人間が人間である以上、避けられない決断です。

ですが、現代の日本は昔に比べて資源が十分にあり、集団の維持において一部の人々を犠牲にする必要性はどこにもありません。

高齢者あるいは社会的弱者を切り捨てるという考えは、歴史上新しい考えでも何でもなく、現代においては過去にそういう歴史があったことを踏まえて、その歴史を繰り返さないようにする必要があります。

先日、twitterで災害時に高齢者を非難させるために子どもたちが高齢者を誘導する訓練を行ったことに対して、批判のツイートが多数見られました。

批判の多くは高齢者のために未来ある子どもたちの命が犠牲になってはならないという意見であると思われますが、確かに高齢者のために子どもを犠牲にする状況を望む人はいません。

少子化の時代であればなおさらでしょう。

ですが、たとえば高齢者の命よりも子どもの命の方が大事であるとか、命に優先順位をつけるというのは、誰かを犠牲にしないとならない限界状況に陥らない限りは決してやってはならないことだと思います。

災害はその限界状況の1つではあると思いますが、この件を子どもを犠牲にするリスクがあるので絶対にやめるべきと完全に否定するのではなく、高齢者を助けられる余裕があるならば高齢者を助けるべきであり、子どもが犠牲になる可能性があれば無理には行わないという対応で良いのではないでしょうか。

誰もが年を取ったり、病気や事故で障害を負って他の人のサポートが必要となる可能性があります。

危機的状況で高齢者や病気・障害のある人を切り捨てることを想定するのは、若くて健康な人たちにとっても実はリスクであり、自分たちがいつそうした切り捨てられる側になるかは誰にも分からないのです。

もちろん、高齢者や病気・障害ある人々を支えるために若くて健康な人々が大きな犠牲を払ってしまえば、社会の運営もままならなくなって集団の維持も困難になることから、適切なバランスを取る必要はあります。

今後、日本の経済が衰退して少子高齢化が進み、社会全体に余裕がなくなってきた時、特定の年代や集団を目の敵にしてバッシングや排斥運動が起こる可能性もゼロではありません。

しかし、人間はともに助け合いながら生きていく社会的動物であり、助け合いを放棄することは他者を害するだけではなく自分自身にもその報いが来ることをよく自覚しなければいけないと思います。

社会保障制度においても、災害時の互助においても、高齢者を切り捨てることなく、適切な制度や運用のもとに助け合いの精神が続くことを願っています。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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