今回は病気予防の観点からサプリメントの効果について解説する記事です。
現代は様々なサプリメントが販売されており、一見すると体に良さそうなイメージがありますが、病気の予防に関して実際のところはどうなのか説明していきたいと思います。
目次
サプリメントの病気予防の効果に関する近年のエビデンス
上記のようにアメリカでは、魚油に含まれるオメガ-3脂肪酸(DHA、EPA)が最も多く消費されている天然物由来のサプリメントのようです。
オメガ-3脂肪酸に関して79の実験(計11万人以上の被験者)をレビューした論文では、オメガ-3脂肪酸の摂取による心筋梗塞などによって死亡する確率はほとんど変わらないと報告されています。(心臓の冠動脈の病気で死亡するリスクは1.1%から1.0%に減少。なお、不整脈の発症率は3.3%から2.6%に減少すると報告されています)
オメガ-3脂肪酸自体は健康に良いことが分かっていますが、サプリメントによる病気の予防効果はそれほど大きくないようです。
ビタミンD3(おもに魚に含まれるビタミンD)のサプリメントに関する研究報告では、ビタミンD3によって高齢者の場合は死亡率が下がる可能性があると報告されています。
しかし、カルシウムとビタミンDを合わせたサプリメントでは脳卒中のリスクが増加したという報告もあります。
また、2022年6月に発表された米国予防医学専門委員会の報告では、βカロテンやビタミンEのサプリメントは、心臓・血管病、がんの予防に有益性があるとは認められませんでした。
また、βカロテンの場合、喫煙者や職場でアスベストに暴露された人にとっては、βカロテン補給によって肺がんリスクが上昇したことが認められています。
マルチビタミンサプリメントでは、心臓・血管病やがんの予防のために効果があるかどうか、現時点での証拠は不十分であると言われています。(2022年現在)
サプリメントは時に有害となる
サプリメントにあるビタミンやミネラルは取り過ぎてしまうと、かえって健康に有害になってしまうことがあります。
水溶性ビタミン(ビタミンB1、ビタミンCなど)と違って、脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・Kは、取りすぎにより時に健康に害を及ぼします。
たとえば、ビタミンAを取り過ぎると嘔吐、脱毛、発疹などを発症することがあり、ビタミンDでは頭痛、口渇などに加えて腎臓などにカルシウムが沈着して結石ができることがあります。
ビタミンKを取り過ぎると、下痢、嘔吐などを発症することがあります。
また、鉄分の補充は貧血を予防するのに役立ちますが、取り過ぎると体内に鉄が沈着して血管や臓器に障害を起こすことがあります。
こうした過剰摂取は普通に食事をしていれば、通常起こりませんが、サプリメントで特定のビタミン・ミネラルを取り過ぎてしまうと起きてしまう可能性があります。
サプリメントを使う時は、用量・用法に注意して過剰摂取にならないよう気をつけて下さい。
サプリメントは使わない方が良いのか?
結論から言うと、特定の状況下で医師の指示があればサプリメントを使う必要がありますが、そうでない場合はサプリメントの病気予防の効果はほとんどない、あっても効果はわずかと考えられるので、病気予防の観点では必ずしもサプリメントを使う必要はないと考えられます。
サプリメントを使う必要があるのは以下の場合です。
①血液検査で鉄やビタミンB12などの数値が低い時にそれらを補充する場合
②妊娠する可能性のある女性が葉酸を摂取する場合
①の場合、鉄欠乏性貧血であれば鉄分のサプリメントは有効です。
また、胃を手術で切除した人はビタミンB12や鉄分が十分吸収できずにしばしば不足するため、その場合はサプリメントで補充します。
②の場合は、妊娠初期に葉酸の摂取が不足すると胎児の先天性障害である神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが分かっていることから、葉酸が不足しないようサプリメントを使うことがあります。
ただ、葉酸もビタミンB12の含まれていない葉酸だけのサプリメントを過剰摂取することで、かえって悪影響を及ぼしてしまうこともあるので、葉酸だけの取り過ぎは注意が必要です。
→参照:妊娠中の葉酸摂取はいつからいつまで?【医師監修】 | ヒロクリニック (hiro-clinic.or.jp)
ほかにも、骨粗鬆症の方で、ビタミンDが不足している場合にサプリメントでビタミンDを補充することもあります。
まとめ
病気予防の観点からは、サプリメントによる予防の効果はほとんどないか、あっても限定的です。
取り過ぎは健康に害を及ぼすため、サプリメントを使う時は過剰摂取に注意する必要があります。
喫煙者はβカロテンのサプリメントは取らない方が良いと考えられます。
病気予防をサプリメントだけに頼るのではなく、日頃から栄養バランスの取れた食事をとり、適度な運動を行い、十分な睡眠を確保し、ストレスをため過ぎず、趣味や知的活動を楽しめるように、まずは心がけて下さい。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
参考文献