今回は腰痛の予防に関する記事です。
2019年の国民生活基礎調査の概況によると、自覚症状の中で、腰痛の割合は男性では1位、女性では2位になっており、腰痛に悩まされている人は大変多いです。
腰痛があると生活の満足度が下がってしまうことから、なるべく早いうちから予防に努めることが大事と考えられます。
予防に努めていても病気や怪我で腰痛となってしまう場合もあるので、100%予防することは難しいですが、なるべく腰痛にならないよう、または腰痛になっても悪化を防ぐために役立つことについて今回は紹介していきたいと思います。
目次
腰痛の原因
腰痛の主な原因は以下の通りです。
・怪我によるもの:肉離れ、骨折など
・変性症によるもの:椎間板変性症、変形性脊椎症、腰椎変性すべり症など
・脊髄神経の圧迫、炎症、損傷によるもの:坐骨神経痛、脊柱管狭窄症、腰椎分離すべり症、椎間板ヘルニア、椎骨・椎間板などへの感染、馬尾症候群、骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折など
・脊椎以外の原因によるもの:腎臓結石、子宮内膜症、線維筋痛症(広範囲の筋肉痛と疲労を伴う慢性疼痛症候群)、がんの転移、妊娠など
以上、細かい分類になっていますが、ざっくりと分けるのであれば
①先天的なもの
②年齢や怪我、生活習慣によるもの
③それ以外
このようになります。
今回は②の中でも生活習慣が原因の腰痛の予防について主に扱っていきます。
腰痛を悪化させる要因
次に腰痛を悪化させる要因について生活習慣に関わるものを解説をします。
運動習慣
運動習慣がないことが腰痛の原因になることがあります。
背筋や腹筋が弱いと、背骨をしっかり支えることができず、これが腰痛を引き起こすことがあります。
平日は運動せず週末だけ運動する人は、トータルで見ると運動量が多いとは言えないので、日常的に適度な運動をしている人よりも腰痛に悩まされる可能性が高くなると言われています。
体重増加
体重が増えて肥満体になってしまうと、腰に負担がかかり、腰痛につながる可能性があります。
仕事に関連する要因
重い物を持ち上げたり、押したり引いたりする仕事、背骨をひねったり振動させたりする仕事は、怪我をしたり、腰にダメージが加わって、腰痛につながる可能性があります。
デスクワークをしていて1日中座っている習慣が続くと、腰痛の原因になることがあります。
また、ずっと同じ姿勢で立ち続けていることも腰痛のリスクになります。
怪我
スポーツ、交通事故、転倒などによる外傷は、腱、靭帯、筋肉を痛めて腰痛の原因になることがあります。
また、大きな怪我をすることで、椎間板の破裂やヘルニアを引き起こして腰痛をもたらすこともあります。
精神的な健康
不安や抑うつが強いと、腰痛への感受性に影響して、通常よりも強い腰痛を経験することがあります。
また、ストレスも、筋肉の緊張を引き起こすなど、さまざまな形で身体に影響を与えて腰痛悪化の原因になることがあります。
骨粗鬆症
骨粗鬆症になってしまうと、脊椎圧迫骨折が発生し腰痛の原因になることがあります。
タバコ
タバコは、椎間板への血流を低下させる可能性があり、椎間板の変性を早めて、腰痛の原因となることがあります。
腰痛の予防のために
他の病気と同じように、腰痛を100%予防するということは難しいですが、リスクを抑えるために役立つことがいくつかあります。
運動
定期的に運動して、筋肉を強く柔軟に保つことが予防に役立ちます。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、椎間板の健全性を維持して腰痛の予防に役立つという研究結果があります。
腹筋を鍛えておくことも腰痛予防に効果的です。
栄養
肥満は腰痛のリスクになるので普段から食事の量や内容に気をつける必要があります。
また骨粗鬆症の予防のためにカルシウム、ビタミンDを十分に摂取することも大事です。
ストレス・過重労働対策
強いストレスや過重労働は腰痛の悪化の原因になります。
仕事でストレスや残業が多く、腰痛にも悩んでいる方は、無理をせず仕事の配慮を職場に求めることも大切です。
会社には安全配慮義務があるので、労働者が体調を悪化させないように配慮をする義務があります。
職場からの配慮にもできることと、できないことがあるかも知れませんが、腰痛で苦しんでいる方で仕事の負荷が大きい方は、一度上司や人事などに相談するようにしてみて下さい。
仕事や作業中の工夫
仕事などで腰痛になってしまう原因には、重いものを持ち上げる、腰に振動を受け続ける、腰に負担のかかる同じ動作を繰り返すこと、不自然な姿勢などがあるので、なるべくこうしたもの長時間続けないように工夫する必要があります。
机や家具など
人間工学に基づいて設計された腰に負担のかかりにくい家具や機器があると腰痛予防に良いので、余裕があればこうしたものを揃えると良いです。
また、ふだん作業する机や台は自分の身長に合った適切な高さにします。
座高が高かったり、低かったりする人は、標準的な高さの机では合わない可能性もあるので、無理をして高さの合わない机を使わないようにして下さい。
立っている時の注意
立ち仕事を長時間する場合は、片足置き台に、適宜、交互に左右のどちらかの足を載せて、姿勢に変化をつけると、腰の負担を減らすことができます。
座っている時の注意
立っている状態よりも座っている状態の方が腰にかかる負担は大きいので、長時間座り続けるのは腰に良くありません。
座る位置を頻繁に変えたり、定期的に歩く、筋肉を軽く伸ばしたりして、腰の緊張をほぐすようにします。
腰痛予防のためのクッションを使うこともお勧めで、クッションがなければ枕や丸めたタオルでも代用できます。
座っている時に足が宙に浮いていると腰に負担がかかるので、足が床に届かない場合は、何か足を載せることのできる物を置くようにします。
靴
靴に関しては、歩きやすく、ヒールの低い靴を履くようにします。
転倒などの事故を防ぐために、作業用の靴や履物は、大きすぎず、土踏まずがあり、指のつけ根や足底のアーチをしっかりと支える足にフィットした、滑りにくいものを使います。
また、床からの腰への伝わる衝撃を少なくするため、底が薄すぎたり、硬すぎたりしないものを選びます。
高いヒールの靴は転倒の危険があったり、腰に負担がかかるので履かないようにします。
物を持ち上げる時
できるだけ重い物を持つ機会を減らすことが大事です。
重い物を運ぶ時は、ふだんから機械や器具を使ったり、大人数で物を運ぶようにします。
どうしても1人で重い物を持たなければならない時は、急に持ち上げないようにして、持ち上げる時には、膝から持ち上げて、物を体に密着させ、体をねじらないようにします。
腰痛保護ベルト(コルセット)
腰痛保護ベルトは、装着することで腹圧上昇や骨盤補強効果などで腰痛の予防のために作られていますが、効果については見解が分かれています。
装着により効果を感じられることもありますが、腰痛がある場合に装着すると、外した後に腰痛がより強まるということもあります。
また、女性労働者が、幅の広い治療用コルセットを使用すると、骨盤底への負担を増し、子宮脱や尿失禁が生じやすくなる場合があるとされています。
腰部保護ベルトを使う場合は、必要に応じて整形外科医、産婦人科医、産業医に相談するようにしてみてください。
気温、湿度
気温が低かったり、湿度が高い環境では腰痛が悪化することがあります。
冬は体を冷やさないよう防寒に努めることが大事で、普段から服装は保温性、吸湿性、通気性が良いものを着けておくと良いです。
寝る時の姿勢
横向きに寝て、膝を立てる姿勢をとると、背骨の関節が開き、背骨の湾曲を抑えて腰への圧力を和らげることができます。
ベッドや布団は柔らかすぎると良くないので固めのものを選びます。
禁煙
タバコは脊椎下部への血流を悪くし、脊椎椎間板の変性の一因となります。
また、タバコは骨粗鬆症のリスクを高め、治癒を妨げます。
また、大量の喫煙による咳も腰痛の原因になることがあります。
ストレッチ
以下、オフィスワークと運転業務をしている人向けですが、腰痛予防のためのストレッチの例を紹介します。
認知行動療法
認知行動療法とは考え方、物事のとらえ方を改善するための訓練で、うつ病の患者さんなどの治療に活用されています。
この認知行動療法が腰痛予防に有効であるということが報告されています。
日本では認知行動療法がおこなわれている医療機関は少ないですが、ペインクリニックなどで行っている医院もあります。
まとめ
腰痛の原因は様々ですが、生活習慣に関わるものは、ある程度予防が可能です。
腰痛を悪化させる生活習慣としては、運動不足、肥満、長時間座り続ける・立ち続ける、タバコ、ストレス、過重労働、重いものを持ち上げる・押したり引いたりする、背骨をひねる、振動を受け続けるなどがあります。
予防のためには、適度な運動、バランスのとれた栄養、同じ姿勢や動作を続けず休憩をはさむ、禁煙、ストレスや過重労働を避ける、重い物を持つ機会を減らす、重い物を持つ時は姿勢に気をつける、といったことが大事になってきます。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
参考文献:
Low Back Pain Fact Sheet | National Institute of Neurological Disorders and Stroke