他者に優しくしたり、奉仕したり、お金や物を寄付をしたりすることは、他者だけでなく自身も幸せにしてくれます。
今回は、他者に「与える」ことの効能についての記事になります。
目次
「与える」ことと幸福度の研究
Happiness and Prosocial Behavior: An Evaluation of the Evidence | The World Happiness Report
こちらの記事には寄付や奉仕などの社会的な貢献と、幸福度の関係のことが述べられています。
この記事によると、まず前提として、慈善事業をすると幸福度が高まるということに関して、科学的研究では多くの場合は相関関係はあると言えるものの、因果関係があるとまでは結論づけられないようです。
例えば、慈善事業を行っている人が行っていない人よりも幸福度が高いと報告した場合、慈善事業を行うことで幸福度が高まると結論づけたくなりますが、幸福な人ほど寄付をする可能性が高いという可能性もあります。あるいは寄付をする人は裕福であり、寄付の有無ではなく裕福さが幸福度を高めている可能性もあるので、こうした研究は多くの場合は確実な結論を出すのが難しいようです。
そのため、あくまで相関関係を示したものになりますが、いくつか慈善活動に関する研究を紹介してみます。
Is volunteering a public health intervention? A systematic review and meta-analysis of the health and survival of volunteers - PubMed Observational evidence suggested that volunteering may benefi pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
様々な論文をまとめて分析したこちらのレビューでは、ボランティア活動は、より高い生活満足度、生活の質、より低いうつ病の割合と関連していることがわかりました。このレビューに含まれる研究の大部分は、参加者はほとんどが北米に住む50歳以上の女性です。
Association of volunteering with mental well-being: a lifecourse analysis of a national population-based longitudinal study in the UK - PubMed We conclude that volunteering may be more meaningful for ment pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
こちらの論文では、英国の66,343人のアンケート調査の結果、ボランティア活動は、より大きな幸福度と関連していました。この研究では、ボランティア活動による幸福の度合いは、40歳以上で最も強く現れたようです。
米国に住む1,000人以上の高齢者を対象とした研究では、他人は利己的で貪欲だと思っている人に対して、他人は基本的に善良だと思っている人ほど、ボランティア活動が大きな幸福度と関連していました。
Prosocial spending and well-being: cross-cultural evidence for a psychological universal - PubMed This research provides the first support for a possible psych pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
こちらの論文によると、カナダで140人、インドで101人、ウガンダで700人を対象に調査を行った結果、自分よりも他人のためにお金を使った時の方が、より高い幸福を感じたと報告されています。
(PDF) Spending Money on Others Promotes Happiness PDF | Although much research has examined the effect of incom www.researchgate.net
こちらの論文では、600人以上のアメリカ人女性を対象にした研究を行い、贈り物をしたり慈善事業に寄付するなど他の人に対していつもより多くのお金を使った人が大きな幸福を経験したと報告していて、自分のためにどれだけお金を使ったかは幸福と関連性がありませんでした。
以上、ボランティアや寄付に関する研究の紹介でした。
こうした研究では因果関係はなく相関関係は分かっている、といった話はしましたが、多くの人々が進んで他者に「与える」ことを行っていることから、「与える」行為は私たち人間に備わっている自然な行為の1つなのかも知れません。
人間は自分のためにお金や名声を得ようとする貪欲な心だけではなく、他者に優しくして他者を助けてあげたいと思う利他の心も備えていますから、多かれ少なかれそうした利他の心が「与える」行為に繋がっていると考えられます。
「与える」ことで私たちが幸せになれるのであれば、これほど素晴らしいことはありません。機会があればどんどん「与える」行為をすると良いでしょう。
他者とともに自分にも「与える」ことが大事
「与える」ことは良い行為ですが、無理をして自分の身を削ってまでボランティアや寄付などを行うとかえって自身が消耗して逆効果になることもあります。
こちらの「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代」は有名な本ですが、人のタイプをギバー、テイカー、マッチャーの3種類に分けて、ギバーは「与える」ことを惜しまない人、テイカーは他者を押しのけても自分の利益を優先する人、マッチャーはギバーとテイカーの中間と定義しています。
この本では、ギバーが成功への大切な要素であるとして、ギバーの性質や行動を詳細に解説していますが、ギバーの中でも自分にとっても他人にとっても利益につながる行動をするタイプのギバーと、自分を犠牲にして他人に「与える」行動をするギバーがいて、前者が成功するのに対して、後者は最も損をしてしまう、割を食ってしまうタイプの人であると述べられています。
「与える」ことは人類の文化
宗教でも「与える」ことは積極的に推奨されています。
仏教では布施と言って、「与える」ことは善行為とされています。
イスラム教では喜捨と呼ばれ、義務の喜捨であるザカートと自発的な喜捨であるサダカがあります。
キリスト教でも寄付は推奨されており、寄付文化がキリスト教圏には根付いています。
正に「与える」ことは人類の文化とも言えます。
よく考えながら「与える」
なお、注意点として、「与える」ことは良いことですが、なりふり構わず他者に「与える」ことでその人にとって迷惑になる場合もありますし、過度な支援が時に人の自尊心を傷つけることもあります。
ですから「与える」際は、相手の状況も見ながら、よく考えた上で行うことがまた大切であると言えます。
以上、「与える」ことの効能について、論文や書籍を紹介しながらまとめてみました。
人生をより良いものにするために、「与える」ことを積極的に検討してみてはどうでしょうか。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。