今回は日本の財政赤字問題について、素人ながら現在の状況をまとめてみます。
日本の財政赤字が巨額であることは周知のとおりです。
国の普通国債残高は、2022年度末には1,029兆円に上ると見込まれています。
どのくらい国債発行による借金を重ねてきたか、財務省の資料をいくつか引用してみます。
1990年以降、日本は税収の穴埋めとして国債発行による借金を続けてきており、2020年度は新型コロナ対策のためにかつてない規模で借金を行っています。
2022年度の補正後予算を見ますと、2020年度ほど新型コロナに費やす支出は減ったとは言え、3分の1近くを借金で賄っています。
1990年代から、財務省は借金の多い財政バランスを立て直すために、社会保障予算の抑制に取り組み、かつて盛んだった公共事業予算も大幅に削減してきました。
しかし、国債費(過去の借金の返済と利息)、社会保障費の増加を抑えることができず、借金は拡大する一方でした。
財政赤字拡大の要因には以下のものがあると言われています。
①社会保障費の増大
②負担の先送り
③経済成長の減速
①の社会保障費は、少子高齢化によるもので高齢者が多くなればそれだけ医療や介護費用が膨らみ支出が増大します。
②については、支出に見合った十分な増税が行われてこなかったことが指摘されています。
ここ10年、20年で消費税が何度も上がったにも関わらず、十分に増税されてこなかったというのは、多くの国民にとっては信じがたい話かもしれません。
しかし、1989年に初めて消費税が導入された時は、消費税を上回る所得税減税が行われ、トータルでは減税でした。
消費税が3%から5%に引き上げられた時も、所得税減税を先行して行い、5%に上がった年は実質的には減税となっていました。
トータルで増税になったのは、この30年では社会保障・税一体改革で行った消費税率の引き上げのタイミングが初めてと言われています。
主要な税金での日本の税負担は先進国で最低水準と言われています。
日本の法人で法人税を払っているのは全法人の3割強だけであり、日本の所得税率の実効税率は主要先進国で最も低い部類に属します。
消費税増税や保険料・年金の支払いで生活が苦しいと訴える人々は少なくないと思いますが、マクロの視点で見ると日本人は医療や介護、そのほか公共インフラのサービス内容に見合った税金、保険料を納めていないのです。
そのために膨大な借金をして、支出を埋め合わせているという状況が続いています。
政府や省庁の無駄遣いを改善するのが重要だという意見も多いですが、2019年時点でOECD諸国の中では日本の公務員比率は5.9%と最低比率であり、霞が関はブラック企業並みの過重労働が常態化しています。
もちろん、政府や省庁が出す予算の中には無駄がまだまだ存在するとは思われますが、マクロでみるとそうしたものよりも、そもそも支出に見合った十分な税収が得られていないのが大きいと考えられます。
③の経済成長の減速ですが、ここがやはり一番の痛手です。
これまで日本の公共サービスは高度経済成長期を通して成長することを前提に作られてきたました。
この公的サービスを維持するには常に経済成長を続ける必要がありますが、ここ30年で日本の経済成長は大きく鈍化しています。
1990年以降、歴代政権が行った経済対策・成長戦略で発行した国債の総額は150兆円以上にもなりますが、目標の成長率に届かない状況が30年以上続いています。
財政赤字が膨れ上がると、国家の問題解決能力を弱めることが懸念されています。
個人の立場に置き換えてみればわかりますが、多額の借金をかかえた状態で、何か新しいことを始めるために更に借金を重ねようという気になる人は多くないと思います。
借金が多い状態は国家の政策選択の幅を狭めると言われています。
経済が十分成長しないのであれば、借金の大きな原因である社会保障費を大幅に抑えるかしかないのではと思われるかもしれません。
しかし、社会保障は社会の安定に欠かせないものであり、仮に十分な医療や介護が受けられず、年金や生活保護も不十分となれば、社会情勢は悪化し、治安が乱れ、病気や怪我・起業や事業などが失敗した際の再チャレンジが困難となり、社会全体の安定だけでなく成長の基盤も失われてしまいます。
医療界に目を向ければ、医師の既得権や病院の非効率的な配置・システムなど費用削減のために改善すべき点は多いと思いますが、社会保障制度自体を覆したり大幅に縮小させることは困難であると考えられます。
以上、簡単ですが日本の財政赤字拡大の現状についてまとめてみました。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
参考文献:「民主主義のための社会保障」香取照幸